牛丼。Beef bowl。日本を代表するファーストフードのひとつ。
あのすきやき様の甘辛い味付けは、“Teriyaki”の世界化に見られるように、海外の方もお好きな様で、東京・渋谷あたりの牛丼店は場所柄もありますが、かなりの外国人ツーリストで賑わっています。
かくいう筆者も40年来の牛丼ファン。かつてしばらく海外に暮らしていた時期、久しぶりに帰った日本便のフライトにて、機内食が当時利用したエアラインとコラボしていた𠮷野家の牛丼だった時には、感動で涙があふれそうになりました。
ふとここで気づいたのが、今までたくさん牛丼を食べてきたのに、ワインと一緒に食べたことはなかったなと。まぁ食べるときは大体店内なのでね、どこの牛丼店にもワインは置いて無いですし。そういう食べ物でもないですからね。当たり前と言えばあたりまえ。
ならば、この際やってみてしまいましょう!
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というわけで用意したのは、筆者の好みで𠮷野家の“アタマの大盛牛丼つゆだく”。
いろんなチェーンがありますが、私の場合はやはり𠮷野家です。“牛丼一筋80年”なんてコピーのCM(今や知ってる人の方が少ないですかね)も今は昔、他のチェーン同様、ファースト定食屋に様変わりしてしまいましたが、牛丼の味はやはり変わりません。
この牛丼を今回はスパークリングワイン、白、ロゼ、軽めの赤、そして重めの赤ワインと合わせてみます。
まずはスパークリングワイン。辛口のイタリア・スプマンテです。
これはもう合うというより気持ちが良い。大体の牛丼チェーンにはビールが置いてあると思いますが、同じ感覚で飲みたいですね。やはりシュワシュワはファーストフードにはもってこいです。合うあわないではなくて気持ちよく飲んで食べられる。もちろんこれがちょっと良いシャンパーニュだったりすると、いろいろと考えちゃいますが、そもそもフードペアリングをする際には、料理とワインの“格”を合わせることも大事ですので、気になる部分が無く、気持ちよく合わせられれば良いと私は思います。
強いて言えば、ロゼの泡の方が良いかもしれません。ロゼの持つ少し複雑なニュアンスが、牛肉とそのタレの味に合わせやすいと思います。
付け加えると、紅しょうがのピリピリ感と泡のシュワシュワ感は心地よいマッチングでした。
そして白。シャルドネから造られるフランスのシャブリです。
これは樽を用いていない、ステンレス発酵・醸造のシャブリ。お肉なのでやはりスッキリしたものより、ステンでもシャルドネ的な質感があった方が良いかなというところです。
結果的には、どちらも浮いた感じになりました。悪いペアリングの見本のようなミスマッチ感はないですが、交わるところが無い感じ。牛丼は牛丼で美味しく、シャブリはシャブリで美味しい。まぁ想像はしていましたが。
次は万能選手のロゼ。
これはなかなかイケます。料理の重さとワインの重さがちょうど良い感じ。つゆだくにしたと言ってもそんなに濃さは感じないので、ロゼくらいの重さがピッタリと寄り添ってくれる。サポートタイプですね。軽いタンニンも油をコントロールしてくれて、スッキリ食べられる。
プロヴァンス風の淡いロゼより、少し濃いめのロゼの方がより合わせやすいかもしれません。
そして軽めの赤です。
これも良いかなと思いきや、用意したものは少し赤いベリー系の香味が強いもので、その香りが牛丼の風味とケンカしてしまいましたね。香りの質や若干の甘みを持ったものなど、ワインのセレクトによっては合わせることも出来そうですが、でもやはり赤となってくると、ボディも軽めより中くらい以上の方が良さそうです。
最後は重めの赤。イタリアのモンテプルチアーノです。
このワインはちょっと甘苦い感じもあります。牛丼のタレとはガッツリ組んでくれそうでしたが、ちょっと重すぎたというか、少しこのワインが濃すぎました。味の方向性は良かったですが、ちょっとワインが前に出すぎでしたね。それと𠮷野家はそんなに甘みがあるわけではないので、松屋とかすき家の牛丼の方が良かったかもしれないです。
以上の結果を踏まえた上で考えてみると、中くらいのボディを持ったフランスの赤、コート・デュ・ローヌなんて良さそうですね。イタリアのカンノナウ・ディ・サルデーニャなんかもよさそう。要は牛丼にはグルナッシュということになりますか。
というわけで、独断と偏見の牛丼ワインペアリングでした。