ドンペリことドン・ペリニヨン(1639~1715)は、フランス北東部のシャンパーニュ地方の出身で、キリスト教ヴェネディクト会派の修道士でした。彼は教会の酒蔵の倉庫番を任されて、その後シャンパンの発明に大きく貢献しました。今回はドンペリ縁の地,シャンパーニュ地方を取り上げます。
フランスの国名はフランス共和国で、面積640,679km2(日本の約1.7倍)、人口約6,660万人です。フランスには州に相当する地域圏(地方行政区画)が欧州領土内に22あります。シャンパーニュ地方は、現在のシャンパーニュ=アルデンヌ地域圏にあり、圏内にマルヌ県、アルデンヌ県、オーブ県、オート=マルヌ県があり、首府はシャロン=アン=シャンパーニュです。面積は25,606 km2(長野県と岐阜県を合わせた位)で、人口約133万人です。この地方は全体になだらかな丘陵地帯が広がり、気候も温暖で耕作に適しています。
この地域最大の都市はマルヌ県のランスで、かつてフランスの国王の戴冠式が行われたユネスコ世界遺産のノートルダム大聖堂があります。念の為、せむし男で有名なノートルダム聖堂はパリにあります。交通のアクセスは、パリから高速鉄道TGVで45分、シャルル・ド・ゴール空港からはTGVでシャンパーニュ・アルデンヌ駅まで30分、そこで中距離列車のTERに乗り換えて15分です。
ランスノートルダム大聖堂
シャンパーニュ地方では12世紀から13世紀にかけて、大規模な交易市がありました。シャンパーニュ地方には、仏北東部を水源としてベルギーからオランダに流れて北海に通ずるマース川と、仏東北部を水源としてルクセンブルクからドイツに流れてライン川に通ずるモーゼル川と、仏中部の都市ディジョンの北西30kmを水源として北西に流れてセーヌ湾(イギリス海峡)に通ずるセーヌ川があり、水上交通に恵まれた立地条件でした。また当時イタリア商人が支配する地中海商業圏と、ハンザ同盟が主軸をなした北欧商業圏の中間点にありました。イタリアからは香辛料・染料・医薬・宝石・絹織物等が持ち込まれ、北欧、イギリス、ロシアからは羊毛・毛皮・蝋・蜂蜜・鰊・木材・小麦・卑金属類等が持ち込まれました。この大市は、平原のトロア、バール=シュル=オーブ、ラニー、プロヴァンの4都市の持ち回りで、年6回開かれました。当時この地域を統治していたシャンパーニュ伯は、市場の自由性を保証してラニーの市税を免除する等、この市場を訪問する商人の保護に尽力して、領内の経済を活性化させて富を得ることになりました。
14世紀に入ると、シャンパーニュ伯であったルイ10世がフランス国王に即位したことで、シャンパーニュは国王領となります。この頃から国家の財政が悪化すると共に税金が高騰していき、またイタリア人が羅針盤を使用し始めてフランドル地方やイングランドに直接船で行くようになり、シャンパーニュの国際市場としての役割が終わりました。
今日プロヴァンの町では毎年6月に中世祭りが開かれています。当時の大市を再現したお祭りで、様々な職人、商人、大道芸人、騎士、貴婦人、楽師が当時の衣装を身にまとい、まるで中世にタイムスリップしたように感じるそうです。ワインとシャンパンはもちろん、ご当地名物の料理もいくつかあって、行ってみたいお祭りですね。
ホストが喜ぶフランス人って何だ?
これはかなり無理がありますが、答えはドンペリです。ドンペリはいわずと知れた高級シャンパンですが、正式にはドン・ペリニヨンといい、シャンパンの発明に貢献したフランス人の名前です。「なぞなぞ」は、値段の高いドンペリの注文が入ると、成績の上がるホストが喜ぶと言う構図です。ということで今回はシャンパンの炭酸についてのお話です。
シャンパンは発泡性のワイン(スパークリングワイン)のひとつで、発泡性ワインには、瓶内やタンクで二次発酵してできた二酸化炭素が含まれているものと、人工的に二酸化炭素を入れたものがあります。シャンパンは1本1本の瓶内で発酵して出来た炭酸を閉じ込めるという、とても手の込んだ製法で出来ております。この炭酸を閉じ込めることにコルク栓を最初に利用したのがドン・ペリニヨン(1639-1715)です。それまでワインの栓には油で浸した大麻や革が使われていました。これをコルクに替えることによって炭酸が瓶内に留まり、シャンパンの製造が可能になりました。
シャンパンの瓶の中の炭酸の圧力は約5~6気圧(ビールは約2気圧)と高圧です。ここで気圧に関して簡単に触れておきます。気圧とは本来気体の圧力のことで、一般的には空気の圧力(大気圧)のことをいいます。普段は気になりませんが、私たちも日常気圧を受けて生活しています。分り易い例として、飛行機に搭乗中ペットボトルの飲料を上空で飲んで栓をしておくと、着陸した時には結構凹んでいます。これはペットボトルの内部の空気が上空の低い気圧のもので、地上に着くとそれよりも高い気圧の空気に押される為です。気圧は海面上を1気圧として、単位はヘクトパスカル(hPa)で表し、1気圧=1013hPa=約1㎏重/cm2です。これは1cm2に対して1㎏の物体が乗っているのと同じ位の力がかかるということです。私たちはかなり大きな圧力を受けており、気圧の変化に弱い人いますよね。
シャンパンの栓を抜くと、瓶の内部の気圧が一気に下がって、それまで液体中にあった二酸化炭素が気泡となって発散します。栓が抜けるときの音と勢いにびっくりしますね。それだけの高圧の状態に保つ為に、シャンパンの瓶は普通のワインの瓶よりも頑丈に出来ているので厚みもあり重たくなっています。また栓は圧縮コルクを使用して、針金で飛び出さないように抑えつけられます。初期のシャンパンは、瓶内の二酸化炭素の量を調整することが出来ず、約40%の瓶が圧力に耐え切れず、破裂することもしばしばありました。ひどい年には80%の瓶が破裂したこともあるそうです。その後、1836年に地元の化学者のフランソワという人物が、瓶内に発生する二酸化炭素の量を予知する実験に成功し、これが発表されてシャンパンの量産化が可能になりました。
シャンパンの栓の開け方にはコツがあります。まずは6~8℃に良く冷やしておきます。温度が高いとその分二酸化炭素が勢い良く膨張して噴出します。また開封前は絶対に瓶にショックを与えないこと。ドンと置いただけでも中にその力が伝わって、開けた時にはとんでもないことになります。実は開栓時になるべく音を立てないのがマナーだそうです。コルク栓が飛び出して誰かに当ったら危ないし、飛び散ったシャンパンを被ったら服が汚れます。でも私はあのポンッという音も好きなんですがね。