日本の食卓でお馴染みのイワシ。
イワシは親しみある魚の代表格にもかかわらず、10年ほど前はあまり見かけませんでした。
不漁が続いて姿を消したイワシは、たまにスーパーで見かけても一匹500円を超える値が付いていたことも。
イワシやアジ、サンマなど大衆魚の生息域は「レジームシフト*」の影響を受けていると言われ、大きな周期で漁獲量が変化するのだそうです。
周期が戻ったおかげでこの数年は漁獲量も戻り、一時は高級魚扱いで食卓に上らなかったイワシもありがたいことに再び手の届く魚になりました。
*レジームシフト(Regime shift):気温や風など地球規模の気候要素が数十年間隔で急激に変化すること。
シラスや干物など加工品は一年を通して流通していますが、イワシにもちゃんと旬があります。
日本で主に食べられているのは「マイワシ」「ウルメイワシ」「カタクチイワシ」で、なかでも代表的な「マイワシ」の旬は6~10月。
春に北上し、秋に南下する産卵前の下りイワシは、特に脂がのって美味しいと言われています。
夏から初秋にかけて、今が旬のイワシ。
数年ぶりに、庶民の魚に返ったイワシ。
脂の乗ったベストタイミングでイワシを食べ尽くし、美味しいワインと合わせればさらに気分も上がりそうです。
~料理と楽しむワイン~
今回はイワシとワインのマリアージュをご紹介します。
目次
イワシがスペシャリテのアンダルシア料理店
美味しいイワシとワインを求め、東京にあるイワシが定番メニューというお店へ行ってみました。
南スペイン料理のお店[エル・チリンギート]は、JR市ヶ谷駅から外堀通りを四谷方面へ数分歩くと見えてくる、ガラス張りのかわいらしいお店です。
店名の「チリンギート」とは、スペイン語で海辺のレストラン(海の家)のことだそうです。
その名前の通り、スペイン南部で海辺の屋台などで焼いている「イワシのエスペト(炭火串焼き)」が看板メニュー。
スペインでもイワシは人気なのですね!
明るいエントランスからお店に入ると、シェフの優しい笑顔が出迎えてくれます。
オーナーの新倉孝之輔シェフは、南スペイン・アンダルシアのリゾート地マラガの近郊で料理研修をしていたことがあり、その時このエスペト(炭火串焼き)に出会い、素材を生かした調理法に感銘を受けて日本で再現しようと決めたそうです。
そして帰国後はスペイン料理専門店でシェフを務め、2014年市ヶ谷に「エル・チリンギート」を開店。今でも年に一度は渡西して、本場スペインの味を日本に伝えているそうです。
そんなこだわりの料理と聞いて、益々期待が高まります。
早速お店の定番料理「イワシのエスペト」を注文!
店内はぐるりとカウンターが取り囲むように厨房があり、中になんと炭火の囲炉裏が設置されています。
カウンターに陣取ると、目の前の炭火にイワシを乗せ、熱々丸焼きしているのが見られるレイアウト。
かぶりつきでジュウジュウと焼かれるイワシを眺めながら待つこと数分。
そして出てきたイワシのエスペトはとっても良い匂い!
焼き立ては香ばしくてジューシー、トマトのソースがかかっているのがアクセントになっています。
イワシのエスペト
メニューを見ると串焼きの他にも、イワシのタルタル、イワシの酢漬け、イワシのフリットなどイワシ尽くしの至福メニューがずらり。
多彩なイワシ料理をモダンなエッセンスで仕上げているとのことで、海の家をコンセプトにしながらスタイリッシュなのも頷けます。
他にも南スペイン・アンダルシア地方の郷土料理がメニューに並んでいるので、あれこれ悩むのもまた楽しい。
イワシに合うワインはこれ!
ドリンクメニューはワイン通の新倉シェフが厳選したスペインワイン、シェリー酒、スペイン産ビールが充実しています。
スペインのものを中心にリストしているそうですが、特におすすめを訊ねたところ
「南スペイン・アンダルシア地方産の自然派(Bio)ワインを多数取り揃えています。特に南スペイン東部ウエルバの地ブドウ【サレマ】種を使ったワインは、おもしろいですね、ぜひお試しください」とのこと。
イワシに自然派ワイン! 想像しただけでも相性良さそうです。
サレマ種のワイン「ガライ・ブルー」(写真右端)
他に変わったところでは、甘口の「マラガドゥルセ」というマラガ産のワイン。
日本で飲めるのはこちらのお店だけという珍しいワインだそうです。
お勧めのグラスワインを頼んでみました。
まずはキリッと冷えた白ワイン、熱々のイワシにぴったりです。
ほんのり苦味のきいたイワシは、軽めの赤ワインにも、自家製ソーセージやイベリコ豚には、しっかり目のワインやシェリー酒にも合うそうです。
お料理もワインも沢山あって目移りしますが、なんといってもグラスで提供してくれるワインの種類が多いのが嬉しい!
自然派ワインはもちろん、あれこれと試してしまいました。
おひとり様メニューも充実しているので、カウンターで炭火焼きを眺めながらお食事するものGood。
グループで行くなら奥にあるテーブル席が落ち着いた雰囲気になっています。
スペインの自然派ワインを飲んでみたい、ジューシーなイワシが食べたいなぁ、という時にふらりと立ち寄ってみたいお店でした。
東京メトロ有楽町線・南北線市ヶ谷駅7番出口より徒歩1分
JR市ヶ谷駅より徒歩3分
el chiringuito エル・チリンギート
http://elchiringuito-japan.com