以前から気になっていた東京の日本酒蔵、「東京港醸造」さんを訪ねてみた。
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東京23区にある唯一の酒蔵
日本酒の酒蔵って47都道府県それぞれに、最低でも1軒は必ずありますよね。日本の首都であり、大都会、コンクリートジャングルといったイメージがある東京都にも、澤乃井や嘉泉、多満自慢、金婚といったブランドに代表される数軒の酒蔵があるのですが、それらが位置しているのは東西に長い東京の西部、多摩地区から奥多摩までの緑豊かなエリアにあるわけです。大都会マンハッタンが代表的なイメージのニューヨークが、実はアメリカ屈指のワイン生産地で、ニューヨーク市以外の州内各所に生産地域があるのと少し趣が似ていますかね。首都ではないですが。
では東京の中心部、コンクリートジャングルの方に酒蔵は無いのかいなというと、実はあるんですよ、1軒。それが今回訪ねた「東京港醸造」。
大都会に蘇った、新しく古い酒蔵
東京港醸造は2011年開業、2016年清酒製造免許を取得し、清酒製造販売を開始と、かなり新しい日本酒蔵。それまでは23区内に酒蔵は無かったと言うことになりますかね。
ここまで読んでお気づきの方もいらっしゃるはず。日本酒製造免許の新規発行は現状行われていないのではということ。国内向けの日本酒製造は、新規参入が認められていないのですね。
これに対しては昨今、いくつかの例があります。酒造免許を保持している酒蔵への委託醸造であったり、酒蔵を買い取ってしまって、新規参入するなど。新しいところでは、最近ニュースになりましたが、ドンペリニヨンの元醸造最高責任者が、富山県で日本酒を製造、販売を始めましたが、これも同様の例。免許は持っていても酒造をやめてしまっている酒蔵も多いことから、この様な例はこれからも増えるのではないでしょうか。
そしてこちらの東京港醸造、ルーツは江戸幕末にこの地、現在の港区芝で造り酒屋を営んでいた「若松屋」にあります。
近くには薩摩藩邸があり、御用商人も務めていた若松屋には要人たちが密談に使う奥座敷も備わり、西郷隆盛や勝海舟といった、まさに幕末を動かした偉人が頻繁に訪れていたそうな。その証拠に現在もこれらの人物が宿代の代わりにおいていったという、いくつかの掛け軸が残されています。この頃、志士たちが商人の協力を得て、奥座敷に潜伏するようなことは良くあった話で、なかなかロマンがありますね。西郷と勝による江戸無血開城へも、何か関りがあるかもしれません。
さてこの若松屋、100年ほど続いたのち、当主の他界と酒税法の改正により明治42年(1909年)に廃業してしまいます。その約100年後の平成23年(2011年)、7代目の現当主により酒造業の復活を目指し製造免許を取得、東京芝の酒「江戸開城」のブランドネームとともに現代に蘇った訳ですな。
地下鉄で。。。
現在のこちら、最寄り駅は都営地下鉄三田線の三田駅が一番近いでしょうか。JRの田町駅や浜松町駅からも歩けそうです。地下鉄で日本酒の蔵を訪ねるというのも、なかなかレアな環境です。
ロケーションはまさにコンクリートジャングル!広い国道15号をわずかに入った裏道にある、敷地22坪の鉄筋コンクリート4階建てビルが酒蔵です。入り口には日本酒の蔵の証でもある杉玉も吊るされています。
こちらでは蔵見学は実施しておらず、代わりと言ってはなんですが、玄関脇に角打ち用のテイスティングカーなるものが鎮座しており、蔵の酒をアレコレ試飲できる仕組み。試飲というか角打ちか。気に入ったものがあれば、向かいの建物1Fにあるショップで購入できます。
この日も私みたいにはるばる目指してきたであろう方や、近所で犬の散歩ついでに寄ってみた常連と思しき方々で賑わっていました。
とりあえず愛山で醸した「ラブマウンテン」(直訳!w)など数種を頂く。蔵の人も言っていた通り、このところのトレンドっぽい、甘酸っぱいフルーティな感じの酒質が共通している。意外に気に入ったのは、下戸のカミさんが飲んだ、紅麴仕立ての甘酒。こちらは酸がしっかりしていて、すっきりした美味しさ。
ここなら無理なく東京観光に加えられそう。テイスティングカーの営業時間は、しっかりチェックしてから行きましょうね!