以前、カリフォルニアワイン協会(CWI)が開催したテイスティングイベントで出会ったプレスキール・ワイナリーのワイン。エレガントで食事にも合わせやすく、複雑さと透明感を兼ね備えた魅力的なワインですが、日本に輸入されていないというのが大変残念に感じたのを覚えています。
そんなプレスキールのワインが、9月1日より日本でも発売がスタート!あらためてその魅力や特におすすめの4アイテムを、輸入元である株式会社都光のマーケティング部部長竹中康一さんに伺いました。
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目次
プレスキール・ワイナリーとは
プレスキール・ワイナリー(Presqu’ile Winery)は、カリフォルニア州サンタバーバラ郡のサンタ・マリア・ヴァレーに位置するワイナリーです。アーカンソー州で4世代にわたり農業を営んできたマーフィー家が、ワイン造りの夢をかなえるために2007年に立ち上げました。
彼らの哲学は、「土地の個性を最大限に表現する」こと。農業一家らしいテロワールに向き合う誠実なブドウ栽培と、著名な醸造家と手を組んだ自然酵母による発酵やミニマルな醸造で、その理念を体現しています。また、醸造家ディーター・クロニエ氏は、73エーカーに及ぶ自社畑の植樹に携わり、畑の多様性を深く理解。マーフィー家と共に設計した重力式ワイナリーでは、小区画での丁寧な作業と穏やかな醸造スタイルを通じて、畑の個性を引き出し、豊かな表情を守り続けています。
テロワールの特徴
サンタバーバラ郡は、北アメリカプレートと太平洋プレートの衝突により沈み込んだ痕跡が海岸のすぐ近くにあり、深くて冷たい海の影響を強く受けるエリアです。さらに、サンタバーバラ郡にユニークな気候をもたらしているのが、山脈の地形です。カリフォルニアのほかの地域は、山脈が海に対して平行に連なっていますが、サンタバーバラ郡では、山脈が垂直に連なっています。そのため、冷たい海風が遮られずに畑に吹き込み、ワイン用ブドウに最適な冷涼な気候と大きな昼夜の寒暖差を生み出します。
ワイナリーが拠点を構えるサンタ・マリア・ヴァレーは、1981年にAVA(アメリカ政府認定のブドウ栽培地域)に認定を受けたエリアで、豊富な日照時間と冷涼な気候、そして海洋性の土壌が特徴です。“カリフォルニアのグラン・クリュ(特級畑)”と呼ばれるビエンナシードがある場所で、サンタバーバラを代表するオー・ボン・クリマなどの優れた造り手がこの地でワインを手掛けています。
プレスキールは、自社畑であるプレスキール・ヴィンヤードを中心に、ビエンナシードやサンタ・リタ・ヒルズAVAの著名なワイン畑であるサンフォード&ベネディクト・ヴィンヤードのブドウも使用しています。
プレスキールの4つの魅力
魅力の詰まったプレスキールですが、都光が輸入を決めたのには4つの理由があるといいます。
魅力1:新世代のピノ・ノワールとシャルドネ
プレスキールを代表するブドウ品種は、ブルゴーニュ品種であるピノ・ノワールとシャルドネです。近年、ブルゴーニュワインは価格が高騰し、さらには温暖化の影響でリッチなスタイルになる傾向があります。そんな中、世界的に脚光を浴びているのが、冷涼産地であるサンタバーバラです。
新世代のピノ・ノワールとシャルドネの中心地として、日本市場でも「サンタバーバラの需要は確実に高まる」と考えているそうです。
魅力2:親しみやすいアルコール度数
プレスキールのワインはアルコール度数が比較的低めです。そんな特徴を竹中さんは、「飲み疲れしない柔らかさと透明感」と表現。「食事と自然に寄り添うスタイルで、日常的にワインを楽しみたい日本の消費者に応えられるワイン」と説明してくれました。
魅力3:確かなバックグラウンド
プレスキールの醸造家であるディーター・クロニエ氏の技術的な土台は、世界的に名高い南アフリカのエルゼンバーグ農業大学での学びに始まり、名門カヌ・ワイナリーでの実習を経て築かれました。
そこで醸造家を務めていたのがリチャード・カーショウ氏です。カーショウ氏は、イギリス出身のマスター・オブ・ワイン(MW)であり、現在は南アフリカで信頼の厚い醸造家として自身のワイナリーを立ち上げています。クロニエ氏はカーショウ氏から多くを学び、特に彼が分けてくれた1997年のドメーヌ・デュジャック・クロ・ド・ラ・ロッシュとの出会いは、「生涯をピノ・ノワール造りに捧げたい」と心に決めるほどの衝撃的な体験でした。
さらに、2015年ヴィンテージからは、ドメーヌ・デュジャックの後継者ジェレミー・セイス氏がプレスキールにコンサルティング・ワインメーカーとして参加。ブルゴーニュと共通するプレスキールの哲学「土地の個性を最大限に表現する」を共に追求しています。
このことから、「単なるトレンドワイナリーではなく、ワイン造りの哲学と技術の確かなバックグラウンドを持っている造り手です」と竹中さんは語ります。
魅力4:市場でのポジショニング
プレスキールの特徴について竹中さんは、「高品質ながらも手の届く価格帯」を挙げています。また、ブルゴーニュとカリフォルニアの“架け橋”となり得る存在として、「ワイン愛好家はもちろん、和食と合わせたい新規顧客層にも広げられる」と感じているそうです。
プレスキールのおすすめワイン4本
最後に、プレスキールのおすすめワイン4本をご紹介します。すべてが、サンタ・バーバラ・カウンティ史上最高のヴィンテージのひとつになると見られている2023ヴィンテージです。
プレスキール サンタ・バーバラ・カウンティ ピノ・ノワール 2023
複数の畑のブドウを使用し、自然酵母で発酵。フレンチオークの古樽で11ヵ月、ステンレスタンクで6ヵ月育成しています。
【特徴】
ビングチェリー、ローズヒップ、乾燥オレンジの皮、白檀の香りが、土壌由来の風味を中心とした味わいを引き立てます。ジビエ料理、ベジバーガー、ローストチキンとのペアリングがおすすめです。
(プレスキールのテクニカルシートより引用 )
産地:サンタ・バーバラ・カウンティ
品種:ピノ・ノワール 100%
アルコール度数:13.5%
希望小売価格:5,000円(税抜)
プレスキール サンタ・バーバラ・カウンティ シャルドネ 2023
*画像は2022ヴィンテージ
複数の畑のブドウを使用し、自然酵母で発酵。フレンチオークの古樽とステンレスタンクで6ヵ月育成しています。
【特徴】
明るく爽やかで、マイヤーレモン、柑橘の皮、砕いた白い花、そして海風のような塩味がたっぷりと詰まったワインです。チーズボード、クリーム系パスタ、さまざまなグリルした魚料理とのペアリングによく合います。
(プレスキールのテクニカルシートより引用 )
産地:サンタ・バーバラ・カウンティ
品種:シャルドネ 100%
アルコール度数:13.0%
希望小売価格:4,700円(税抜)
プレスキール・ヴィンヤード ピノ・ノワール 2023
100%自社畑で栽培されたブドウのみを使用し、手摘みで収穫後、除梗して造られたワインです。こちらは以前テイスティングしたのですが、ワインの透明感と複雑さが味噌を使ったサーモンのステーキとの相性が良かったのが印象的でした。
産地:サンタ・マリア・ヴァレー
品種:ピノ・ノワール 100%
アルコール度数:13.2%
希望小売価格:11,000円(税抜)
プレスキール・ヴィンヤード シャルドネ 2023
*画像は2022ヴィンテージ
100%自社畑で栽培されたブドウのみを使用したワインです。育成にはオーストリア産オーク樽やステンレスタンクを使用し、ブドウの実力を引き出しています。
産地:サンタ・マリア・ヴァレー
品種:シャルドネ 100%
アルコール度数:12.5%
希望小売価格:8,800円(税抜)
ペアリングのコツ
【ピノ・ノワール】
サンタバーバラらしい果実味と酸がありながら、タンニンはしなやかで繊細。そのため、脂の旨みと甘辛いタレをまとった関西風の鰻の蒲焼きと好相性です。ワインの酸がタレの甘みを引き締め、鰻の脂を心地よく流してくれるため、互いの良さを高め合います。
【シャルドネ】
果実のふくらみがありつつもミネラル感とフレッシュさが際立つため、白身魚のお刺身との相性は格別です。特に鯛や平目のような上品な旨みを持つ魚と合わせると、ワインの柑橘や塩味のニュアンスが素材の持ち味を引き立て、和食らしい繊細な調和を感じていただけます。
サンタバーバラの確かな造り手
サンタバーバラは、しばしばブルゴーニュに代わるワイン産地として取り上げられます。プレスキールも、ブルゴーニュの醸造家と手を組み、ブルゴーニュ品種に尽力しているワイナリーですが、その味わいはブルゴーニュのマネには留まりません。マーフィー家が目指すテロワールが表現された、ブドウの実力を感じられるワインだといえるでしょう。
プレスキールのワインは、食事と合わせることで一層魅力が引き立ちます。ぜひ、気軽な食卓から特別なディナーまで、ペアリングを楽しみながら味わってみてください。同じ産地であり、ブルゴーニュと比較されることの多いオー・ボン・クリマのワインと飲み比べてみるのもおすすめです。