10月31日、スペインからシェリー酒のメーカー[BODEGAS FAUSTINO GONZÁLEZ](ボデガス・ファウスティーノ・ゴンザレス)の生産者Jaime González(ハイメ・ゴンザレス)さんが来日しました。
2週間に渡り東京、大阪、京都で試飲会などを行い、最終日にあたる11月13日には銀座“しぇりークラブ”にて新商品発表会と試飲セミナーが開催されました。
セミナーの様子。
※シェリー酒は、アンダルシア州にある三つの町=ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ、サンルーカル・デ・バラメダ、エル・プエルト・デ・サンタマリア、を結ぶ「シェリー三角地帯」と呼ばれる地域で生産される白ワインの一種。
BODEGA=ボデガとは、スペイン語でワインを生産するワイナリー、またワインの醸造や熟成をする建物を指す名称です。
目次
守り続ける伝統製法
[ファウスティーノ・ゴンザレス]はヘレス・デ・ラ・フロンテーラの家族経営によるワイナリー、父親から家業を継いだハイメさんはファウスティーノ家16人兄弟姉妹の10男にあたります。
熟成庫は町の中でも最も標高の高い地域にあり、19世紀半ばに建てられた建物は高台にあるため風通しが良く、シェリー酒造りには適した環境だそうです。
その製法は1971年の創業以来一貫して変わらず、伝統的な手法を守り今でも古樽による発酵を行うなど全て手作業で行われています。
近年はステンレスタンクによる発酵を行うワイナリーが多い中、頑なに樽発酵を続けているのには理由がありました。ハイメさんによれば、古樽による発酵では酵母が自然に活動し、仕上がりの風味と味わいに歴然とした違いが現れるそうです。
古樽による発酵。
自然に敬意を払うブドウ造り
ワインに使用しているブドウ品種は“パロミノ”と“ペドロ・ヒメネス”の二種類。どちらもワイナリーから車で10分ほどの”パゴ・モンテアレグレ”にある自社畑で栽培されています。特に“ペドロ・ヒメネス”種をヘレス・デ・ラ・フロンテーラで栽培しているのは非常に珍しく数カ所しかありません。
※通常シェリー酒に使われる“ペドロ・ヒメネス”種は、コルドバ近郊モンティーリャ・モリレスが主な栽培地となっています。
自社畑のペドロ・ヒメネス、遠くにヘレスの街が望める。
収穫は完全な手摘み、人力のみで機械の力を借りることはありません。
自社畑は創業者の妻(ハイメさんの母親にあたる)の名前から“ビーニャ・エル・カルメン”と名付けられ、農薬や化学肥料を極力使わず環境に配慮した農法を実践しているそうです。そのため畑には野ウサギや山ウズラなどが住んでいて、動植物にとってもサンクチュアリ。
時に熟したブドウを食べられてしまうこともあるそうですが
「カメレオンは虫を食べてブドウ栽培を助けてくれるし、動物たちと仲良く共存している」
と、自然に敬意を払う心温まるエピソードがありました。
畑に住んでいるカメレオンの家族
唯一無二のワインの秘密
[ファウスティーノ・ゴンザレス]のシェリー酒 “クルス・ビエハ”というブランド名は、ワイナリーがある地域名が由来。今回試飲したのは、“フィノ・エン・ラマ”、“アモンティリャード・エン・ラマ”、“パロ コルタド・エン・ラマ”、“オロロソ・エン・ラマ”、“ペドロ ヒメネス・エン・ラマ”の5種類です。
“エン・ラマ”とは無濾過のことで、こちらではボトリングの際にフィルタリングなどの調整加工を一切せずに詰めています。
ヘレスにあるワイナリーを訪問した時のエピソードでこんなことがありました。
蔵では樽から直接汲み上げたワイン(シェリー酒)をテイスティングさせてくれることもあるのですが、ある時ボトルが用意されていたので
「今日は樽出しではないのですね?」とたずねたところ、
「樽からそのままボトルに入れてるから中身は同じだよ。」とのお返事。
その言葉通り、“クルス・ビエハ”は樽出しと変わらず生き生きとした酵母の香りと風味がそのまま味わえる、とても繊細なシェリー酒です。
また今回の試飲会では、従来商品のシェリー酒に加え、新商品の白ワイン
“Vendimia 2017 Blanco PX”(ペドロ・ヒメネス種)と“Vendimia 2017 Blanco Palomino”(パロミノ種)が発表になりました。
ペドロ・ヒメネス種は1200本、パロミノ種はわずか600本の生産です。
このワインは「自分たちの畑のペドロ・ヒメネスで白ワインも造って欲しい」というファウスティーノ家のファミリーの要望から産まれたもの。
ハイメさんが試しにペドロ・ヒメネス種で白ワインを造ったところ、とても良い出来で驚くほど美味しかったとのこと。家族にも評判がよく、それならばとパロミノ種の白ワインも造ることにしたそうです。そのような家族の思いが結実し、2種類揃ってのお披露目となりました。
シェリー酒と同じように産膜酵母の下で6ヶ月熟成させたもので、酒精強化をせず、シェリー酒になる前の状態のワインが楽しめます。
ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ産のペドロ・ヒメネス種はシェリー酒としても珍しく、特に自社栽培100%のペドロ・ヒメネスによる白ワインはファウスティーノ・ゴンザレスのものだけだそうです!
ファウスティーノ・ゴンザレスのシェリー酒と白ワインは“しぇりークラブ”の他、スペイン系レストランやバーで飲むことができます。
唯一無二のワインたち、どこかで目にしたら是非お試しください。
BODEGAS FAUSTINO GONZÁLEZ
https://bodegasfaustinogonzalez.com
しぇりークラブ