スペインに在住していた頃数々のワイナリーを訪れましたが、今回は普段飲んだことはなかったような高級赤ワインのワイナリーを訪れたときのことをまとめました。
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スペインの高級赤ワイン産地「プリオラット」とは?
スペイン北東部にあるカタルーニャ州は、バルセロナが州都です。そのカタルーニャ州の内陸部にあるタラゴナ県のDO.(原産地呼称)プリオラットは、スペイン屈指の高級赤ワインの産地。地中海性気候と内陸部の大陸性気候両方の影響があります。ワイン以外でもオリーブやオリーブオイル、アーモンドやヘーゼルナッツが生産される地方です。
「プリオラット」の伝説と発展の秘訣
「プリオラット」のワインには、なんと伝説があります。大昔のある日、羊飼いがこの地方のモンサン山の斜面に天使たちを見ました。羊飼いは神のお告げと受け取り、後に「スカラデイ」と名付けた修道院を建設しました。ミサに赤ワインが必要とのことで、修道女たちが一帯にぶどうを栽培し始めたのが、プリオラットのワインの歴史の始まりです。
その一帯が、「プリオラット」の中でも高級ワイナリーがあるグラタジョプス村です。
とはいえミサ用の赤ワイン。最初から品質を求められたわけではありません。長らく地元の人だけが飲むアルコール度が高くタンニンも渋い雑なワインでした。それが80年代、90年代に他地方のスペインを代表する醸造家たちがこの地方に目をつけ、ワイナリーを構えて改革を計り、徐々に世界的に評価が高い赤ワインが生産されるようになりました。
山の斜面を利用した段々畑
この地方がワインの生産地として注目されたポイントはいくつかあります。ひとつは、地中海沿岸でありながら内陸に位置するので、夏と冬、また1日の中でも寒暖の差が激しい、熟成タイプの上質な赤ワインを醸造するのに適した気候であること。もうひとつは、独特の土壌です。珪岩混じりの色の濃い粘板岩はリコレーリャと呼ばれ、この地方ならではのもの。隣接するDOにはこのリコレーリャはありません。土地の水分の蒸発を防ぐだけではなく、ワインにミネラル感が加わります。また、山の斜面を利用した小区画でぶどうが栽培されるため、畑の整備から収穫まで手作業が必須。よって人の手によって丁寧に少量生産されるワインが多いのが特徴です。
10万円以上のお宝ワインを試飲
そんな「プリオラット」を一躍世界市場に押し上げた4人の醸造家がいます。そのうちの一人がアルバロ・パラシオス。私がスペインでワインを学んでいた時にみんなで訪れました。畑は馬で耕していたのが印象的でした。アルバロさんには会えませんでしたが、ワイナリーの最高峰のワイン「レルミタ」を試飲できました。パンチが効いたスパイシーさがありながらもエレガント。と書くと薄っぺらいですが、ネットで調べるとなんと10万円以上の値がついているものも!地元の人だけが飲んでいたプリオラットのワインは、今では地元では見かけることすらないワインも多々あります。