赤い鳥のラベルを見たことがある方、けっこう多いのではないでしょうか?
スコットランドで長年親しまれているフェイマスグラウス(The Famous Grouse)は、「毎日の一杯」にちょうどいいウイスキーとして、日本でもじわじわと人気を集めている存在です。ラベルに描かれた鳥は「グラウス(雷鳥)」と呼ばれるスコットランドの国鳥で、これがブランド名の由来でもあります。
フェイマスグラウスが生まれたのは1896年。スコットランド・ハイランド地方で生まれ、マッカランやハイランドパークといった有名なモルト原酒をキーモルトにブレンドしています。とはいえ価格は1,500円〜2,000円程度。ちょっと不思議なくらい手の届く価格帯です。では、その実力はいかほどか。実際に飲んでみると、価格以上の価値を感じるウイスキーであることがよくわかります。
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【ふわりと優しい、毎日飲める味わい】
まず色合いは、やや明るめのゴールド。琥珀色というより、淡く透き通った黄金色といった印象で、見た目からも軽やかさが伝わってきます。香りを取ってみると、甘く香ばしいバタークッキーのような香りと、オレンジピール、ほのかにシナモンやナツメグといったスパイスのニュアンス。主張しすぎないけれど、しっかりと香りの層があります。
味わいはとても素直で、クセがありません。麦芽のほっこりとした甘さに、軽やかな果実感が重なり、少しだけウッディな渋みとドライさが後味を引き締めてくれる。ピートも穏やかに感じられます。余韻は比較的短く、飲み終えた後には「もう一口」と自然に手が伸びてしまうような、そんな軽快さがあります。
ロックでも悪くありませんが、個人的にはハイボールがおすすめ。炭酸のシュワシュワ感とバランスよく混ざり、ほんのりした甘さとスパイス感が一層引き立ちます。食中酒としても◎。唐揚げやフライドポテトなど、塩気のある料理と一緒に合わせたくなる一本です。
【“地味だけど良い”という価値】
このウイスキーを語る上で欠かせないのが、その「目立たなさ」だと思います。派手なボトルデザインではないし、キャッチーな宣伝もほとんど見かけません。けれど、それこそがフェイマスグラウスの魅力でもあります。
スコットランド国内では何十年も連続で販売数1位を誇る国民的ウイスキー。つまり、“普通に美味しい”ということが、実はどれだけすごいことなのかを教えてくれる存在です。ウイスキー初心者にとっては、「クセがなくて飲みやすい」と感じる一本になるでしょうし、経験者にとっては「ちゃんとしたモルトの土台があって、価格以上」と感じる、日常使いの名脇役になるはずです。
また、フェイマスグラウスにはネイキッドグラウスやスモーキーブラックなどの派生商品もあり、それぞれが異なる個性を持っています。たとえばネイキッドグラウスはシェリー樽後熟のブレンデッドモルトで、グッと甘くて濃厚な味わい。スモーキーブラックはピート感があり、ラフロイグに慣れた人には物足りないかもしれませんが、スモーキー入門としては絶妙なバランスです。
【まとめ:背伸びせずに、ずっと寄り添ってくれるウイスキー】
フェイマスグラウスは、日常にそっと寄り添ってくれるタイプのウイスキーです。とびきり個性的ではないけれど、飲むたびに「やっぱりこれでいいんだよな」と思わせてくれる安定感。和食にも洋食にも合うし、気取らずに飲める。そんな“普通であることのありがたさ”を再確認させてくれる存在です。
あれこれ飲んできたウイスキー好きの方も、これからウイスキーに挑戦する方も、一度あの赤い雷鳥のラベルを手に取ってみてはいかがでしょうか。意外と、自分の“定番”になるかもしれません。
皆さんもぜひ、試してみてください。