大分県九重町、標高1,100mの高原にたたずむ寒の地獄旅館。
友人に、お酒とサウナ好きをどうしても連れていきたい旅館があると誘われ、よく食べよく飲む4人で伺いました。
超冷泉と高温サウナ、そして酒好き館主のこだわり美酒料理。
今回は、新緑と春の風が気持ちよい季節に訪れた一泊二日の滞在記をお届けします。
目次
時を止めたような静寂と、磨き抜かれた美しさ

宿に到着すると、まず目を引くのはその風格あるたたずまいです。
阿蘇くじゅう国立公園の豊かな自然に囲まれた敷地内には、時が止まったかのような静寂が流れています。
緑の奇麗な庭園と温泉の流れる美しい川。玄関先に掲げられた「寒の地獄」の文字。
一歩足を踏み入れると、そこには日常からかけ離れた別世界が広がります。
館内に生けられた季節の花々や、随所に置かれたアンティークな調度品。それら一つ一つに、宿のおもてなしの心が宿っています。
特に印象的なのは、あめ色に輝くほど磨き上げられた板張りの廊下です。
窓から差し込む光を鏡のように反射するほど艶のあるその床は、宿の方々が大切にこの場所を守ってきた証のように感じられました。
究極の整い体験、超高温サウナと14℃の冷泉

こちらの名物は何と言っても、源泉そのままの14℃の冷泉です。超高温サウナとセットで体験します。
1. 限界を攻める超高温サウナ
サウナ室は、サウナーが喜ぶ超高温設定です。
扉を開けた瞬間に熱気の圧が押し寄せ、数分で全身から滝のような汗が吹き出します。
木の香りに包まれながら、じっと熱と向き合う時間は、心を整える精神統一のひとときです。
2. 体験したことのない14℃の冷泉
サウナで極限まで熱せられた後は、いよいよ冷泉へ。汗を流し、透き通った浴槽に足を踏み入れます。
あまりの冷たさに、最初は呼吸が止まるほどの衝撃が走ります。
一般的な水風呂とは比較にならない冷たさは、まさに刺さるような痛みの感覚。
しかし、じっと耐えて2分、3分。次第に痛さは和らぎます。
最後は冷たさで震え始めて限界を迎えて上がりました。
3. リクライニングチェアで究極の「整い」
冷泉から上がった後は、リクライニングチェアでゆっくり。
自分の体がミントになったようにスーッとする感覚を楽しみます。
リラックスして体を休めていると、気づかぬうちにうたた寝しています。
そして目を開けると全身スッキリ。
頭の中と視界がクリアになる感覚。究極の整いでした。
酒好き館主の美食と銘酒の宴

サウナと冷泉で完全にデトックスされた後、待っているのは旅の一番の楽しみの夕食です。
こちらの旅館の魅力は、「お酒好きの館主」による、お酒を楽しむためのさまざまな演出です。
1. いろりを囲む味わい深い料理

夕食処では、各テーブルに用意されたいろりが赤々と燃えています。
パチパチとはぜる炭火の音は、それだけで日本酒がすすみます。
- 前菜の魔力:お品書きにある数々の前菜は、どれも一口食べると日本酒に手が伸びるほどの味わい。
- 炭火の力:串に刺してじっくりと焼かれたあゆの塩焼きは、皮はパリッと、身はふっくら。
肉厚のしいたけや豊後牛も、炭の香りが素材の味を最大限に引き立て、それだけで最高のおつまみです。
2. 厳選された日本酒と「飲み比べ」のぜいたく

日本酒はお酒好きの館主が自ら厳選したラインアップになっています。
特に嬉しいのが、「日本酒飲み比べセット」。
数ある厳選銘柄の中から、自分で3種類をセレクトできるというぜいたくなシステムです。
今回は4人での旅でしたので、それぞれ違うお酒をセレクトし、ぜいたくに全種類を飲み比べました。
私が選んだのはちえびじん、山城屋、屋守の3種類です。
サウナでデトックスした体にいろりの暖かさも相まって日本酒が体に染み渡ります。
まさに大人のための湯治体験でした。
ちえびじん【中野酒造:大分県杵築市】
味わいの特徴:優しい「甘旨」
最大の特徴は、口に含んだ瞬間に感じる「柔らかい甘み」です。
品のある香り:ピーチやベリーを連想させるフルーティーで品のある香りが、お酒を飲み慣れない方でも飲みやすい親しみやすさを生んでいます。
心地よい余韻:お米のうまみが長く続き、デザートのような満足感がありつつも、決して重すぎない絶妙なバランスです。
山城屋(やましろや)【越銘醸:新潟県長岡市】
味わいの特徴:究極の食中酒
派手な香りを抑え、料理の味を邪魔しない「透明感」が最大の武器です。
キレの良さ:うまみはしっかりと感じるものの、飲み込んだ瞬間にスッと消えるようなキレがあります。
温度変化の楽しさ:冷酒ではシャープに、常温に近づくとやわらかみが感じられ、いろり料理のような温かい食事に寄り添います。
屋守(おくのかみ)【豊島屋酒造:東京都東村山市】
特徴:ジューシーな果実味
メロンやバナナを思わせる華やかな香りが口いっぱいに広がります。
フレッシュなガス感:生酒特有の微炭酸を感じるようなピチピチとした躍動感があります。
甘みと酸のバランス:優しい甘みがありますが、後口の酸にキレがあり、次の一杯が欲しくなる味わいです。
体が喜ぶ、朝の目覚めと穏やかな時間

深いリフレッシュを経て迎える朝。
窓から差し込む清々しい光とともにいただく朝食もまた、素晴らしいものでした。
- 館主自慢の米:九重町産のこしひかり。館主自ら栽培しているお米は、ふっくらとして甘みが強く、おかずなしでも食べられるほどのおいしさです。
- 郷土の味:具だくさんのだんご汁が、朝の体を優しく温めてくれます。
まとめ:体の軸が整う、唯一無二の宿

寒の地獄旅館での滞在は、想像を上回るものでした。
超高温サウナで体を解放し、14℃の冷泉で引き締め、いろりを囲んで厳選されたお酒と向き合う。
この究極の動と静の繰り返しが、バランスの崩れた自律神経を整えてくれます。
忙しい日常を忘れ、体と心を整える旅。
年に一度訪れたいと思えるベストオブ酒旅宿になりました。

ちなみに寒の地獄旅館は日本秘湯を守る会(全国約140軒の宿が加盟する団体)に加入しています。
加盟宿に宿泊するとスタンプを押してもらえるシステム。
10軒泊まってスタンプを10個集めると、宿泊した宿の中から1軒に無料で宿泊(1泊2食付)できるという特典があります。
有効期限は最初のスタンプから3年間なので、加盟宿を巡ってスタンプを集め、その土地のお酒をいただく旅も楽しそうです。
寒の地獄旅館
〒879-4911 大分県玖珠郡九重町田野257番地
0973-79-2124
チェックイン 15:00~
チェックアウト 10:00
